先日、冬の味覚を堪能しに、愛知県の南端に位置する「篠島(しのじま)」を訪ねました。
長年愛知に住んでいながら、実は今回が初めての訪問です。これから海外のお客様にこの素晴らしい地をご紹介するための「取材」も兼ねて、冬の島へと足を運びました。
1000年続く、伊勢神宮との深い絆
篠島の歴史は、驚くほど神聖な物語に彩られています。『日本書紀』によれば、伊勢神宮を建立した倭姫命(やまとひめのみこと)の一行が伊勢湾を旅していた際、この島に立ち寄られました。その時、島で獲れた海産物、特に「鯛(タイ)」の美味しさに大変喜ばれ、伊勢神宮への献上を勧められたと記されています。
それ以来、1000年以上の長きにわたり、毎年3回、真っ白な装束に身を包んだ島の神職たちが、塩漬けにした鯛を船団に載せ、対岸の伊勢神宮へと献上し続けています。
また、伊勢神宮で20年に一度行われる「式年遷宮」とも深い関わりがあります。遷宮によってお役目を終えた社殿の古材は、篠島の神社へと移築され、その1年後に島での「御遷宮」が行われるのです。伊勢の神聖なエネルギーが島へと引き継がれるこの循環に、目に見えない精神的な繋がりの尊さを感じずにはいられません。
冬の味覚の王様、トラフグの芸術

ふぐといえば山口県の下関が有名ですが、実は愛知県は全国でも有数のトラフグの産地です。
今回宿泊した「香翠荘(かすいそう)」さんでいただいたふぐ料理は、まさに芸術そのものでした。筋肉質で弾力のある「てっさ(刺身)」の透明感は、いけばなで例えるなら**「冬の庭に咲く、凛とした白い椿」**のよう。一枚一枚が命を宿しているかのような美しさです。
個室でゆったりと、私たちのペースに合わせて運ばれるコース料理。器との調和、盛り付けの繊細さ……日本人である私ですら、その深いおもてなしの心に改めて感動いたしました。
手付かずの自然と、夕日のプロムナード

食後は、島の西側を1時間ほどハイキングしました。そこには人の手が入っていない原始的な森が残り、古い「藤の蔓(つる)」がうねるように自生していました。生物学的な視点で見ると、その力強い生命力に圧倒されます。道中にはお地蔵様が優しく佇み、展望台の一つには伊勢神宮から贈られた古材で作られた鳥居が、伊勢の方角を向いて静かに立っていました。

島を包む穏やかな時間、そして「東海地方随一」と言われる夕日の美しさ。波の音を聴きながら入る大浴場も格別でした。
旅のヒント:アクセスについて

名古屋方面からお越しの場合、車や電車で「師崎港(もろざきこう)」まで。そこから高速船でわずか10分という近さです。船に乗る前に宿へ電話をしておけば、港までスムーズに迎えに来てくださいます。このちょっとした「心遣い」が、旅の始まりをとても心地よいものにしてくれます。
