澤田酒造で触れる「ものづくり」の源流

副社長がこの地域の歴史や澤田酒造の在り方を紹介してくださいました。
知多半島、常滑。ここはかつて「東海湖」があった豊かな堆積層の上にあり、古くから焼き物や木綿、そして「発酵」の文化が花開いた土地です。

この辺りの湧き水を利用して酒造りをしています。
この地で江戸末期から続く**「澤田酒造」**さんを訪ねました。そこで目にしたのは、単なる酒造りではなく、日本の近代産業の礎とも言える「知性と技術の集積」でした。
1. 織機、自動車、そして醸造。知多の「エンジニアリング」
知多半島は、日本の産業史において極めて重要な役割を果たしてきました。「知多木綿」を織るための技術は、後にトヨタグループの祖である豊田佐吉による「自動織機」の発明へと繋がり、それが現代の自動車産業へと発展していきました。
興味深いのは、この地域の「お酒」と「産業」の関係です。
現代の知多は、世界をリードする自動車産業の街。安全を第一とする「車の街」であるがゆえに、深酒をせず、少量でも満足できる質の高いお酒が求められてきました。澤田酒造の「白老(はくろう)」が、地元の人々の文化に寄り添い、しっかりとした濃い味わいを持ちながらも、凛とした気品を湛えている理由がここにあるのです。
2. 伝統の「道具」が守る、生物学的プロセス

澤田酒造では、今では数少なくなった「木の道具」を大切に使い続けています。
特に、大きな**「杉の桶」**で米を蒸す工程は圧巻です。現代ではステンレス製の機械が主流ですが、木という天然素材は、微生物(麹菌や酵母)にとって最適な湿度と温度のクッションとなります。
職人がいなくなりつつある「桶」を使い続けることは、効率を求める現代社会への挑戦であり、生物学的な理にかなった「本物の味」を守るための設計思想(Design Philosophy)なのです。
3. 歴史の交差点:ソニー、ミツカン、そして江戸前
この知多の地からは、世界的な起業家たちが輩出されています。
• ソニー創業者の盛田家(ねのひ)
• ミツカン創設者の中野家
かつて捨てられていた酒粕から「赤酢」を作り、江戸の寿司文化を支えたというエピソードは、まさに「循環」と「イノベーション」の象徴です。徳川幕府の終焉と共に、酒造りの道具が発酵調味料(酢や醤油)の製造へと転用されていった歴史も、この土地のレジリエンス(回復力)を物語っています。

麹を箱に移して育てます。

見学後には利き酒の時間。異なるお猪口で5種類のお酒が楽しめます
4. 「白老」という名に込められた願い
お酒の名前「白老」には、深い意味が込められています。
玄米を「白く」磨き上げる技術と、健やかに「老いる(時を重ねる)」ことへの敬意。それは、私が大切にしている「いけばな」の精神、すなわち「命の盛りを愛で、移ろいゆく時間を慈しむ」という心とも深く共鳴します。

澤田酒造で製造されたお酒と常滑焼の素敵なお猪口が購入可能です。
